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東京高等裁判所 昭和51年(く)284号 決定

少年 T・Y(昭三六・一二・三一生)

主文

原決定を取り消す。

本件を千葉家庭裁判所に差し戻す。

理由

本件抗告の趣意は、法定代理人・親権者母T・N子、附添人・弁護士○光○連名作成名義の抗告申立書および昭和五一年一二月二七日付抗告理由補充書に記載されたとおりであるから、これらを引用する。

論旨は要するに、原決定の処分は著しく不当であるから、その取消を求めるというにあるところ、原決定が、本件送致事実の一部を「非行なし」として不処分としながら、これらを要保護性認定の一資料とした点を論難している。そこで先ずこの点につき検討すると、記録によれば、原決定は、検察官の(一)昭和五一年九月六日付送致事実、すなわち一個の窃盗の非行、(二)同月八日付送致事実、すなわち一個の窃盗の非行、(三)同月二〇日付送致事実、すなわち一個の窃盗の非行および(四)同年一〇月二一日付送致事実、すなわち計二四個の窃盗の非行、以上合計二七個の窃盗の非行事実中、(一)、(二)、(三)の各窃盗の非行計三個および(四)のうち四個の窃盗の非行、以上計七個を犯罪事実と認定し、これらの事実につき少年を医療少年院に送致する旨の原決定をし、残余の二〇個の窃盗の非行事実については、犯罪の成立を認めるに十分な証明がないことを理由に「非行なし」として不処分としながら、これらの事実を少年の要保護性認定の一資料としていることは、所論の指摘するとおりである。しかし、少年法二四条一項所定の、少年に対する保護処分は、客観的にはその自由を制約する点において刑罰に準ずるものがあり、少年審判規則三六条は、罪を犯した少年の事件について保護処分の決定をするには、罪となるべき事実およびその事実に適用すべき法令を示さなければならないと規定するなど、厳格な理由づけを要求していることなどにかんがみると、非行事実の認定については、合理的な疑いを容れない程度の厳格な判断が必要とされていることはいうまでもないが、要保護性の認定についても、もとより安易な判断は許されるべきではないのであつて、とりわけ、非行事実そのものを要保護状態認定の資料として考慮するような場合には、非行事実の認定にも比すべき慎重な配慮が要求されていると解すべきであつて、かりそめにも、非行事実につき「非行なし」と判断しながら、特段の事情もないのに、これを要保護性認定の資料とすることはあつてはならないというべきである。しかるに、本件において、窃盗の非行の回数が要保護性の判断にあたつて重要な意味を持つことはあきらかであるにもかかわらず、原決定が検察官の送致した窃盗二七個中二〇個につき、これらを犯罪の証明が十分でないことを理由に「非行なし」として不処分に付しながら、他方、いまだ特段の事情も認められず、また、何ら首肯できる理由の説明があるとも認められないのに、これらを所論のように要保護性認定の資料としていることは、違法であつて許されないと解するのが相当である。しかも、右の違法は前記のように、二七個の送致事実中、実に二〇個の事実に関するものであるうえ、原決定も処分理由の一つとして、少年の窃盗の回数、態様にかんがみ少年の盗癖が深刻な状況にあることを指摘しているばかりでなく、少年の処遇につき意見を提出した関係各機関が原審の非行事実に関する前記の判断を十分に考慮に容れていたかどうかも疑わしい(ちなみに、少年調査記録編綴の少年調査票によれば、家庭裁判所調査官は、少年につき医療少年院送致決定を相当と思料するとの意見を出すにつき、検察官送致にかかる、原決定が「非行なし」とした非行事実を含む前記(一)ないし(四)の非行事実全部、すなわち計二七個を要保護性認定のための非行とした疑いが看取され、また、右少年調査票中の本件の非行欄中の事実の項には、前記(四)の二四個の非行事実を引用してあるにかかわらず、何故かその詳細な一覧表は添付されておらず、この点も理解に苦しむものがある。)のであつて、以上の諸点に徴すると、原決定には、法定に影響を及ぼす法令の違反があるものというほかはない。よつて、その余の論旨に対する判断を加えるまでもなく、原決定は破棄を免れない。

以上の次第で、本件抗告は理由があるから、少年法三三条二項、少年審判規則五〇条により、原決定を取り消すとともに本件を原裁判所に差し戻すこととして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 石田一郎 裁判官 小瀬保郎 南三郎)

原審決定(千葉家 昭五一少一九九〇号・同一九九一号・同二一一五号・同二三一〇号 昭五一・一一・二六決定)

主文

少年を医療少年院に送致する。

理由

犯罪事実

少年は、

1 昭和五一年八月一一日午前一一時三〇分ころ、習志野市○○町×丁目×××番地株式会社○○○○デパート屋上の事務室内において、○主○管理の現金五万七、〇〇〇円を窃取した(少第一九九一号事件)

2 同月一二日午後五時ころ、A(当時一〇歳)と共謀のうえ、習志野市○○×丁目×××番地○○商店店舗内において、○達○子所有の現金六二五円在中の財布一個(一〇〇円相当)を窃取した(少第一九九〇号事件)

3 同月一五日午後一時ころ、B(当時一一歳)と共謀のうえ、習志野市○○町×丁目××××番地先道路に駐車中の自動車内から○浦○所有の現金約七、〇〇〇円在中の免許証入れ(五〇〇円相当)および自動車運転免許証一通を窃取した(少第二一一五号事件)

4 同月二六日午後五時ころ、前記A、C(当時一三歳)と共謀のうえ、習志野市○○○×丁目○○○駅前の空地に駐車中の自動車内から○吉○教所有のキャッシュカード一枚(○○銀行○○支店発行、預金残高二、九三三円)を窃取した

5 同月二九日午後零時一五分ころ、前記Bと共謀のうえ、習志野市○○町×丁目××××番地○○商店店舗内において、○取○に○所有の現金一万五、〇〇〇円を窃取した

6 同年九月三日午後三時三〇分ころ、前記A、D(当時九歳)と共謀のうえ、習志野市○○○○×丁目××番地先道路に駐車中の自動車内から○川○男所有の現金三万八、〇八〇円を窃取した

7 同月一四日午後九時四五分ころ、習志野市○○○○×丁目×番×号○○医院車庫内において、○透所有の自転車一台(一万円相当)を窃取した(以上少第二三一〇号事件)

ものである。

適条

1、7は、刑法二三五条

2ないし6は、刑法六〇条、二三五条

処遇理由など、

1 (イ) 少年はT・Z、T・N子の次男として生れ、異父兄、実兄と共に育つた。

少年は、昭和四三年四月○○小学校に入学後、知能が低いため、同四五年四月から同小学校の特殊学級に編入し、以来同四九年三月に同校を卒業し、翌月から習志野市立○○中学校に入学後も、同中学校の特殊学級に在学し、現在そこの三年生であり、本件非行の共犯者Bは、特殊学級の同級生である。

(ロ) 少年の知能はIQ五九で軽度の精神薄弱(痴愚の上位程度)で、母くにもその疑いがある。そして、少年は昭和四八年八月テンカン発作を起し、以来抗テンカン剤の投薬による継続治療を続けている者であり、行動性能力(IQ六〇)より基礎学習不足による言語性能力(IQ四八)の不足がみられるが、上記の如く先天性の要因にテンカン症による後天性の要因が加わつて少年の知的能力の向上が阻害される傾向にあることが窺がわれる。そして、知能の遅れに伴なつて、年齢相応の社会性が未分化のままで、欲望を満足させるために衝動的に行動してしまう傾向にある少年であり、本件非行も、ゲームセンターでの遊興費を得るために窃盗を累行したものが大半で、後述の如く未だ明らかになつていない窃盗事件も数多く存在することが認め得る状況にあり、その盗癖は常習化している。

また、自分の能力に対する劣等感が強く、同世代の者との交友を避け、若年の者との交友の中で自己主張する傾向にあり、その交友の範囲も狭く、Bを除き数名の小学生(ほとんどが本件非行の共犯者)しかおらず、これらの者と行動を共にして窃盗を累行していた少年である。そして、少年の非行は、小学校五年の時に自転車を盗んで以来、窃盗の累行にあり、他の非行領域への広がりは認められない。しかし、その盗癖は、その回数(なお後述の非行なしの事実も要保護性認定の資料として考慮する)、態様において主体的に加担し、単独的犯行も認められるようになり、より深刻な状況にあると考えられる。

(ハ) 少年の家庭は、父が少年の五歳の時(昭和四二年一一月)に死亡し、母が稼働して少年を含む三人の子を養つてきたため、稼働の間、子供の監督は放置され、家庭内での躾や社会常識の習得のないまま少年らは成長したものと認められ、母は、少年の窃盗非行で少年とともに児童相談所の指導を受けたり、少年の実兄が窃盗保護事件などで少年院に収容されるなど、保護者として少年らの非行防止について留意する機会は、数多くあつたと思われるが、何んの措置も講ぜず、少年を庇いだてして、これを放任し、本件非行に至らせたと認められその保護能力は低い。

2 昭和五一年少第二三一〇号窃盗保護事件は、判示の窃盗の他に、別紙犯罪事実一覧表一ないし四・八ないし二三(以下単に数字のみをいう)までの窃盗送致事実があるから、これについて判断すると右各送致事実を認める少年の供述調書(昭和五一年九月八日付)が作成されている。少年は、軽度の精神薄弱者で過去の記憶が必ずしも定かでなく、この時期に共犯者らと同種手口の非行を累行し、未だ明らかにされない余罪も相当数潜在するおそれがあり、右余罪と明確に識別、特定することは困難と思われるが、更に、少年の自白調書作成の経過は、当審判廷における少年の供述によれば、警察は右送致事実の捜査の際に、予め作成された犯罪事実一覧表(本件自白調書末尾に添付された書面)を用いて、事実を尋ね、少年は記憶のないものまで尋ねられた通りに答えた結果、右自白調書が作成されたもので、右自白調書の信用性は、極めて低いものと認めざるを得ない。そして一六、ないし一九、二三、の送致事実は、いずれもその自白調書を唯一の証拠としており、少年は、当審判廷において、これらの犯行を否定している。従つて、このような自白調書のみによつて、犯罪の成立を認めることは相当でない。

また、一ないし四の送致事実は、三を除き、少年の自白調書と被害届をその証拠とする。一については、窓ガラスを損壊して車上盗を行つたのかについて、何んらの考慮を払うことなく少年の犯行としているが、当審判廷における少年の供述、本件記録によれば、少年は窓ガラスなどを損壊してまで車上盗を行つたことは、今までにないことが認められ、被害届と大きな相違がある。二、四についても、他に少年の犯行と推定しうる証拠がないのに、安易に被害を少年の犯行に結びつけた疑いが強く、三の事実は、少年の犯行を認めるBの自白調書がある。しかし、同人は、少年と同級の特殊学級の生徒であつて、過去の記憶の点、同種手口の非行の累行、潜在的余罪の存在は何んら本件少年と変るところのない少年で、被害届が調書作成以前に作成されていることからみて、同人の自白調書の補強証拠の価値は低い。また、少年は当審判廷において、これらの犯行を否定していることに照らすと、いずれも犯罪を認めるに十分な証明を欠いている。そして、その余の送致事実については被害届もなく、少年が一名ないし二名の者と共謀のうえ、これを犯したとされているが、共犯者らはいずれも、その時期に同種手口の非行を累行しており、未だ明らかにされない余罪が相当数潜在しているおそれがある。そして、漠然とした犯行日に犯行場所の特定を引き当り捜査などにより確定しておかない場合には、他の犯罪との明確な識別を欠き、犯行が共犯関係によつて数名の者によつてなされる時、その一名を欠いた結果、別個の犯罪事実に変つてしまう危険性がある。そこで、少年の右自白調書、A、B、C、D、Eらの供述調書によつて、以下検討すると、八、九、一五、二〇、二二の送致事実の犯罪場所は、相当に漠然していて、特定に欠ける嫌いがあるうえ、その特定を補なう情況証拠も認められない。そして、少年は当審判廷において、右犯行を否認し、少年の右自白調書はその証明力の低いものであること、また、一五、二二は、共犯者の確定にも欠けるものである。次に、一四、二一の送致事実は、一四については、送致事実の共犯とされる者(A、B)の供述調書には、少年との共犯関係を認め得ず、Dの供述調書によれば、同人と共犯で一四の窃盗を行なつた事実が認められるが、これは、少年との別罪かどうかを判断すべき証拠を欠く。二一についてもBの供述調書によれば、送致事実が認定出来るが、上記の如く同人は、少年同様知能が低く、にわかに信用し難ところ、Eの供述調書では、少年との共犯関係を認めておらず、取調の順序からみて、右両名の供述を念頭に入れて、当然に捜査を遂げたものと考えられる同人の供述調書に少年との共犯関係を認めていないことは、少年が右犯罪に加担していない疑いを抱かせるうえ、少年は、当審判廷において、右犯行を否認している事情にあること、以上の点からみて八、九、一四、一五、二〇ないし二二の送致事実は、いずれもこれを認めるに十分な証明を欠くものと考える。最後に一〇ないし一三の送致事実についてであるが、これは、少年が当審判廷において自認する犯罪事実である。しかし、一二については、共犯者のBは、○○○の○ラ○ド○リ○ー○であると供述調書にあり、送致事実の○○○の○○屋と同一の店であると認めうる証拠がなく、送致事実を証明する証拠は、少年の自白調書と、少年の当審判廷の供述のみとなり、右証拠のみによつて犯罪を認定することは、右事情からみて相当でない。一三については、少年の自白調書、A、B、Dの各供述調書によれば、同じ頃に二件の窃盗事実の存在が考えられ、その犯罪場所の不明確さ(○○の県営住宅近くの空地と○○の盆踊がなされた広場とは、同一なのか否か)が加つて、一三の送致事実を認定するに足りる証拠はない。以上の如く、少年が当審判廷において認めた犯罪事実すらその証明が不十分であつて、一〇、一一についても、少年の当審判廷において認め得ても、その内容の真実性に疑問があり、両事実は、A、Bの供述調書によつても、共犯者の確定が出来ず、少年の自白調書の真実性が疑わしい本件においては、右犯罪の成立を認めるに十分な証明はないと認められる。

以上のとおり、上記送致事実は、いずれも犯罪の成立を認め得ず、非行なしとして、これを不処分とし、上記事情を少年の要保護性認定の一資料とするにとどめる。

3 以上の通り、少年の非行性は、その著しい盗癖にあり、これは、先天性および後天性の要因による知的能力の低下が、少年の性格面で社会性の未分化を招き、健全な道徳感情、罪障感の涵養を遅らせ、欲望のままに短絡的に現金盗を重ね癖化させていつたものと認められる。また、少年の劣等感情が、新らたな交友関係を避け、年少の素行不良者との交友関係を継続させて、更に盗癖を深める傾向にあり、少年を在宅のまま教化改善することは、無理解な保護者のもとにあつて、困難である。

少年は当庁に初回の係属であるものの、その盗癖は深刻で、少年を医療少年院に収容し、早期に不良交友関係を改善し、専門家の指導のもとに、徹底した抗テンカン剤の服用習慣を体得させ治療効果を高め、あわせて、少年院における特殊教育を施して義務教育課程終了程度に知能を向上させ、集団生活の中で社会適応性能力を高めることが、少年の将来にとつて最適であると思料する。

よつて、少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項、少年院法二条を適用し、主文のとおり決定する。

犯罪事実一覧表 但し共犯者はいずれも触法少年

番号

犯罪日時

犯罪場所

被害品目

数量

被害額

被害者氏名等

共犯関係

備考

昭和五十一年五月十二日

午後七時ころ

八千代市○○○×××~×番地先路上

(車内)

現金

一五、〇〇〇円

八千代市○○○×××~×

会社員 ○井○美 二十四歳

ナイフ

一ちよう

二〇〇円相当

昭和五十一年五月三十日

午後二時ころ

習志野市○○町×丁目××××番地

(車内)

現金

八、六〇〇円

習志野市○○町×丁目××××番地

公務員 ○水○正 三十二歳

昭和五十一年六月六日

午後時七時ころ

被害者方前路上(車内)

現金

一一、〇〇〇円

習志野市○○×~××~××

修理工 ○村○一 二十一歳

昭和五十一年八月十九日

午前十一時三十分ころ

習志野市○○○×~××××

○○商事前路上(車内)

現金

一三、〇〇〇円

習志野市○○○×~×~××

製めん業 ○山○啓 四十八歳

手提鞄

一個

五〇〇円相当

昭和五十一年八月二十六日

午後五時ころ

習志野市○○○×丁目

空地(車内)

キャッシュカード

一枚

市川市○○×~×××~×

配管工 ○吉○教 四十二歳

昭和五十一年八月二十九日

午後零時三十五分ころ

被害者方

店舗

現金

一五、〇〇〇円

習志野市○○町×~××××番地

小売店 ○取○子 五十八歳

昭和五十一年九月三日

午後四時ころ

習志野市○○○○×~××

路上(車内)

現金

三八、〇八〇円

香取郡○○町○○××××~×

大工 ○川○男 二十七歳

昭和五十一年七月下旬

習志野市○○○○×丁目

路上(車内)

現金

五、〇〇〇円

不明

右同

右同

八千代市○○○

新築現場脇

現金

六、〇〇〇円

不明

一〇

右同

八千代市○○○○○家具店前

(車内)

財布

一個

不明

不明

右同

一一

右同

習志野市○○○○リ○ー○裹

(車内)

財布

一個

不明

不明

右同

一二

昭和五十一年七月二十九日

習志野市

○○○○○屋店

財布

一個

不明

不明

右同

キーホルダー

一個

ジュース

三本

チョコレート

三個

一三

昭和五十一年八月八日

習志野市○○公園内

サイクリング自転車

三台

不明

不明

右同

一四

昭和五十一年八月中旬

習志野市○○○

○○○金属プール脇

右同

一台

不明

不明

一五

右同

習志野市○○○○○丁目

公園前(車内)

現金

五〇〇円

不明

右同

一六

昭和五十一年八月

習志野市○○町×丁目

(車内)

現金

一、〇〇〇円

不明

一七

昭和五十一年八月

習志野市○○○○

小学校前(車内)

現金

一、〇〇〇円

不明

右同

一八

右同

習志野市○○

小学校下(車内)

ライター

一個

不明

不明

右同

一九

右同

右同

ハイライト

一個

一〇〇円

不明

右同

現金

二〇

昭和五十一年八月二十六日

習志野市○○○

○○屋脇(車内)

現金

五〇〇円

不明

二一

昭和五十一年八月十九日

習志野市○○○○○公民館

事務所内

現金

一三、〇〇〇円

不明

二二

昭和五十一年九月一日

習志野市○○○○○○高校前

坂下の店

たばこ 峰

三個

不明

たばこ エコー

二個

セブンスター

一個

二三

昭和五十一年七月下旬

八千代市○○○

○○家具店前(車内)

サングラス

一個

不明

現金      十二万七千四百八十円

ナイフ一ちよう 手提鞄一個時価七百円相当ほか二十四点

合計      十二万七千四百八十円相当

総合計     十三万七千四百八十円相当

参考二 法定代理人親権者母及び付添人弁護士作成の抗告申立書、抗告理由補充書

抗告の理由

本件処分は著しく不当である。

(1) (イ) 少年の非行はまだ深刻な状況に至つていない。

(ロ) 少年には罪の意識と反省が見られ、また勤労意欲も十分にうかがうことができる。

(ハ) 少年の家庭には、少年を教化改善する能力がある。

(2) 少年は、在宅のまま保護観察所の保護観察に付するのが相当である。

(イ) 少年は、あと三か月余で中学校を卒業することができる。

(ロ) 少年は、中学卒業後は、働らくと言つており、労働と社会生活の中での健全化に期待することができる。

(ハ) 少年のてんかん症の治療は続けられていたし、今後も在宅のまま継続することができる。

(ニ) 知能は医療少年院における教育で向上するというものではない。少年の知能に適合した職業と生活形態の選択が重要であり、それをもつとも適切にしかも忍耐づよく続けることのできるのは家庭である。

(ホ) 少年の家庭の保護能力はとくに劣るとはいえない。母の愛情と兄たちの指導は、本件を契機により正しい方向に進むはずである。

(ヘ) これに加えて、保護観察官の専門的な指導、監督が続けられるならば、少年は正しく社会に適応し、安定した生活態度を身につけることができる。

(ト) 以上のような点を考慮すれば、少年を医療少年院に送致することは、その必要性についても、その効果についても、適切な処遇とはいえず、むしろ苛酷な処遇という側面だけが、少年にも保護者にも印象づけられ、少年の人格や社会適応性を決定的に歪めてしまうおそれすらある。

(3) なお、理由の詳細については、付添人がついたばかりなので、さらに検討の上補充書をもつて述べる。

以上

1 少年の非行はまだ深刻な状況に至つていない。

原裁判所は、処遇理由中において、少年の盗癖が著しく常習化していると述べ、犯行回数が多く主体的に加担し単独的犯行も認められる態様から深刻な状況にある、と認定している。

(イ) 犯行回数については、犯罪の成立を認め得ない送致事実の多くを「非行なし」として不処分にした。そして、その際証拠の評価は慎重になされ事実認定は正当であるということができる。

しかし、「非行なし」(=犯罪の成立を認め得ない)とした送致事実を、一方ではそのまま要保護性認定の資料にしている。これは矛盾であり、処遇決定理由の基本的部分で誤まりをおかしたものである。

(ロ) また、主体的加担、単独的犯行などの態様の認定も、あるいは余罪が相当数潜在しているおそれがあると見ていることについても、証拠を欠いている。

原決定はこれらの点を「事情」として一括して要保護性認定の資料にしたが、その「事情」の存否はなんら確定されていない。

(ハ) かえつて、少年の非行は幼稚な方法によるものに限られていること、少年には計画的に犯行を重ねる能力がないこと、交友範囲に悪質な者のないことなどの事実を見れば、少年の盗癖は衝動的な形態で発現しているに過ぎず、今後継続する主体的習癖になりつつあるというような深刻さをうかがうことは出来ない。

2 少年は、知能は低いながらも、罪の意識を持つており、家庭の暖かさについて述べ、その家庭内における親や兄たちの忠告をすなおにきく態度を示している。

3 少年の家庭の指導能力については、兄T・Sの熱意と指導性は調査結果でも明らかにされている。母について精薄の疑いありとする報告はなんら根拠が示されていない。

なお、兄N・Zに対する電話聴取書によれば、同人は少年の医療少年院送致に賛同しているようにみえる。

『しかし、付添人が一二月一五日同人に面接し、真意をただしたところ、同人はつぎのように述べた。

〈1〉家裁からの電話照会の時は、初めてのことだし、言われるままにそれしか方法はないと思いこまされて答えた。

〈2〉 私は、本当は在宅のまま少年の指導にあたりたい。もうすぐ中学校を卒業できるし、就職先についても、T・S、T・Oの雇主が、少年の器用さを高く評価して雇入れの約束をしてくれている。

少年は私の言うことはよくきくし、仕事につけば必らずまじめに働らき盗みなど決してやらないと信じている。

〈3〉 私はすぐ近くに住んでおり、生活も安定している。妻も少年の改善に協力することを誓つてくれている。

〈4〉 母もただ甘いだけではなく、本当に少年の将来を案じているし、私を頼りにしているので、家族が一致協力して根気強くがんばつて行くことができる。』

4 少年の処遇は保護観察が相当である。

抗告理由中にも述べたとおり、少年の中学卒業が目前に迫つているのみならず、少年の年齢が低く、少年の家裁送致が初めてあることなどを特に重視されたい。

その他抗告理由中に述べたところを勘案するならば、少年の処遇は保護観察をもつて必要かつ十分と考えるのが自然である。

少年の知能、これまでの家庭環境、交友関係、教師が厄介者扱かいをしていることその他マイナスの要素にもかかわらず、十分に残つている可能性を尊重され、懲罰的発想に基づくと思われる原決定を取消されるよう求める。

以上

参考三 少年調査票〈省略〉

別紙一

一 犯罪事実の概要

被疑少年は、触法少年(A)と共謀の上昭和五十一年八月十二日午後五時ころ習志野市○○町×丁目×××番地○○商店店舗内におい○達○子所有にかかわる現金六百二十五円入り財布一個時価百円相当合計七百二十五円相当を窃取したものである。

別紙二

一 犯罪事実の概要

被疑少年は、昭和五十一年八月十一日ころ習志野市○○町×丁目×××番地株式会社○○○デパート内ゲームセンター事務室において○主○管理にかかわる現金五万七千円を窃取したものである。

別紙三

一 犯罪事実の概要

被疑少年は触法少年(B)と共謀のうえ、昭和五十一年八月十五日午後一時ころ習志野市○○町×丁目××××の××番地地先路上において駐車中の普通乗用車内から○浦○所有の現金七千円および免許証入一個時価五百円相当ならびに免許証一通合計七千五百円相当を窃取したものである。

参考四 鑑別結果通知書〈省略〉

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